「#マンホール」-記者会見(日本語訳)

ベルリン国際映画祭で2月20日に行われた「#マンホール」記者会見の日本語訳です。

Yuto Nakajima, Kazuyoshi Kumakiri / #Manhole / Berlinale Special - Press Conference - Feb 20, 2023 

www.berlinale.de

司会や現地記者の方(記者A)は英語、熊切監督と日本記者の方は日本語(記者B以降)、裕翔くんは日本語と英語の双方でお話しされていました。特に日本語でお話しされていた部分は、通訳の方のボイスオーバーで聞き取るのが難しかったので、空欄になっている場所が多いです。随時更新します。(追記:あまりに読みづらいので、大体のニュアンスがわかる部分は薄い青字で補っています

※登壇者や記者の方の本来の意図を汲み取れていない部分もあると思うので、1つの参考として読んでいただけますと幸いです。

 

「#マンホール」-記者会見

司会:今夜ベルリナーレ・スペシャルで上映される「#マンホール」の記者会見にようこそお越しくださいました。ゲストを左から順に紹介いたします。彼は俳優だけではなく歌手、モデルでもある、マルチな才能を持ち合わせたスターです。彼はマンホールの中の男、川村を演じました。中島裕翔さん、本日はご参加いただきありがとうございます。

中島:(名札を見せながら笑顔)

司会:[続いて]彼は2度ベルリン国際映画祭に出席しており、1度目は1998年に初めて手掛けた長編映画でパノラマ部門に出席した時でした。おかえりなさい、熊切和嘉さん。

監督:はじめまして。

司会:質問がありましたら、いつでも手を挙げていただいて大丈夫です。まずは熊切監督への質問から始めます。まず、これは岡田道尚さんによって描かれた映画脚本ですよね。監督がどのように打診を受けて、どのように参加したか、また、読んだ時にどう思ったか教えてください。

監督:元々は、僕は岡田さんとプロデューサー陣が1年くらいかけて練ったプロットを見せてもらって。今まで僕が撮ってきた映画とちょっと感じが違ったので、最初は戸惑いもあったのですが、すごく何度も読み返すうちに非常に狭い空間で描かれることも、非常に広がりのある話だと思いまして。それから是非参加したい*1なと思いました。

*1 通訳さんと重なってしまって聞き取れていません すみません 通訳さんは”I really thought it was really interesting”と訳していました

司会:ありがとうございます。そして、どのように中島さんをキャスティングしたのですか。

監督:もともと僕が監督するとなった時点でもう[既に]中島くんでやりたいという話は聞いていて、それは僕も事前に行定勲監督の「ピンクとグレー」という作品を観ていたので、彼はこの作品にピッタリなのじゃないかなと。それは彼の演技力もそうなんですけど、彼のこのスター性と言いますか、そういう部分でも彼にしかできない企画だと思ったので、彼にお願いしました。

 

司会:(記者を指しながら)どうぞ。

記者A:こんばんは。私は昨晩映画を見たのですが……素晴らしい。どのようにこの映画全体を、長きに渡ってまとめたのですか*2。彼が携帯電話を使っていた時、誰も彼に応えませんでした。私たちは全員*3が穴の中にいるように感じました。中でも衝撃を受けたのは、映画冒頭の、パーティーのシーンと音楽です。これほどのものを観たのは初めてなので、是非これについてもっと教えていただけませんか。

*2 原文は”How did you manage to put this something at whole, for so long time”です 肝心の何かが聞き取れていないけど作品のことを指しているのは間違いないと思います 

*3 "We were feeling like everybody in the hole"なのですが、おそらく観客全員がマンホールの中にいることを錯覚するくらい惹きこまれたというこだと解釈しました

監督:始まりのシーンに関しては、映画出だしで観る人を掴みたいなという想いがあったので、なのでああいう、ちょっとある種ポップなシーンから、編集-エディティングで始めました。その中でもいろんな、かなり物語のキーとなる伏線を散りばめた*4つもりです。

*4 聞き取れていません。通訳さんも「のちに解明する伏線をできるだけ入れた」みたいな訳をしていました

 

司会:今お伺いした質問の中に、中島さんが演じたキャラクターがずっと穴の中にいるという話がありましたが、俳優からの視点に関してもお伺いしたいです。これは非常に特徴的な場面設定で、撮影において想像力を要するものだと思います。それについてお話しいただきたいです。中島さん、あまり心地よいものでは無かったですよね?

中島:(英語で)狭くて暗いセットの中で丸ごと1か月撮影を行うことは非常に厳しかったです。最初に台本をいただき、タイトルを見て、「すごい。『#マンホール』、それだけ?」と思いました。男はマンホールに落ちて、命がけで外に出ようとするのですが、私はこのような役をやってみたいと思っていて、自分にとって1つの挑戦でした。撮影では泡-汚い泡に囲まれて、非常にトリッキーでした。このようなことはやったことがなかったので、とにかく、身体的にも精神的にも、とても大変でした。

(原文:Shooting for a whole month, in the tight and dark set, was very intense. The first time I got the script, and then I saw the title, I was like "Oh my gosh, #Manhole. that's it." And then a man who falls into a manhole and he risks his life to get out - so originally I wanted  to do a roll like this, so that was challenging for me. And shooting was very tricky, because I was surrounded by bubbles - dirty bubbles; I've never done it before, and anyway that was really tough, mentally and also physically. )

追記:"Oh my gosh, #Manhole. That's it."の部分ですが、「まさにそれだ!」ではなく「それだけ?!(=超シンプル)」という意味だと思ったので訂正しました。

 

司会:監督への質問なのですが、空間をうまく扱うため、また主人公への多様な焦点の当て方をするために、どうやって情報共有をしましたか。

監督:確かに、こんなに狭い中で映画を撮るのは初めての経験だったので、しかも主人公は足の怪我をしているという(○○を○○したかった)ので。その足かせが大きいことが(○○で)、非常に燃えるところがありまして、この狭い中でどれだけ映画を(○○できるかということ)はひたすら考えて。まあ、(○○です)。*5

*5 すみません、もう全然聞き取れない 随時更新します わからなければ通訳さんが話されていたニュアンスだけでも......

 

司会:(記者を指しながら)どうぞ。

記者B:(自己紹介の後に)日本語で大丈夫ですか?中島さんには英語で聞いた方がよいかなと思って。中島さんには、ベルリンに、初めて上映されている感想をお伺いしたいなというのと、熊切さんには戻ってきた感想をお伺いしたいです)。*6

*6 同上、以下の空白も随時更新します

中島:(日本語で)まず、夢のようですね。こういう所に来られると正直思っていなかったので、この作品に連れてきてもらえたという感じですね。(英語で)ベルリナーレに参加できると思っていなかったので、世界中から俳優や監督が集まる華々しいイベントに出席できていることが大変光栄です。

(原文:I've never dreamed to join Berlinale, so it's really an honor to be here at this glamorous event, with actors and directors from all over the world.)

監督:僕は最初が大学の卒業制作でベルリンのパノラマ部門に招待してもらったので、その時それで初めて海外に(○○たのが)ベルリンだったんですよ。そういう意味でも、非常に思い入れがあるので、(○○)。着いたばっかりなので、これから楽しみたいと思いますね。

 

記者C:(自己紹介の後)熊切さんに、今のお答えに続く形なのですけれども、今回ベルリナーレ・スペシャルの部門でカムバックされたということで、それについてはどんな感想をお持ちですか。

監督:僕が最初に来た時に、タランティーノ監督が「ジャッキー・ブラウン」でレッドカーペットを歩かれていて、タランティーノさんに僕の映画のフライヤーを渡したくて、でも貰ってもらえなくて、サミュエル・L・ジャクソンが(○○)ですけど、それがすごく覚えてますね。さすがレッドカーペット(○○)非常に感慨深いです。

司会:今の時代ならツイッターで彼と連絡取れますね。

 

記者D:まず中島さんには川村という役についてお伺いできればと思うのですが、ネタバレを避けたうえでですね、随分(○○)自己本位な姿を(○○)、(○○)思うのかということと、熊切監督の(○○)も併せて、そういった若者のSNS文化、今の日本の断面を、ある種(○○)ですが、(○○)聞かせていただけますか。

中島:(日本語で)そうですね、川村という役は見た目はすごく好青年で、仕事ができて、ハイスペックな男で、翌日に結婚式を控えているという本当に幸せの絶頂にいるような男なんですけれども、ある種完璧主義者というか、もう完璧な男がマンホールに入って、ジタバタもがく様がですね、なんかこう人間の本性というか絶望を表しているなということがすごく台本を読んだ時に思いましたし、僕自身人間のしょうもないというか(○○な)キャラクターを観るのがすごく好きなんですよね。ちょっとネタバレになるので最後の方は言えないんですけど、だんだんマンホールに入っていろんな仕掛けが(○○)、そういう風に化けの皮が剥がれる部分は本性が出る一面なので、自分が演じるにおいても、映画の中で全て(○○ことが)すごく難しかったですけど、とにかくここから抜け出そうというバイタリティがとんでもなく強い人だと感じました。台本読んだ時、「俺だったらすぐ諦めちゃうな」と思って(笑)。(○○)バイタリティは、それはやっぱり幸せの頂点にいるような生活を手にした、それを手放したくない(○○なので)、それを納得できたのと、生命力が強い人だなって感じました。

監督:元々僕は綺麗事ばかりの人間を描きたくないというのはあって、その中でやっぱり川村という人物の極限まで追い詰められた中で出てくる人間性と言いますか、それを描きたかったっていうのもありますし、先ほど仰っていた自己本位やSNSの文化であったり、その便利な部分と、もちろんその匿名性の怖さを、思わぬ形で(○○ことは)あると思うので、そこはやっぱりしっかりと描きたいなと思いましたね。(○○で)良い作品になったと思います。

 

司会:おふたりに質問なのですが、普段はどのようにSNSを使われていますか。

中島:(英語で)実は私は日本のアイドルグループHey!Say!JUMPのメンバーで、インスタグラムとYouTubeの2つのアカウントを持っています。私は普段見るだけですが*6、そのようなSNSは観客の反応を見るのに非常に役に立ちます。なので、反応を知るようにしています。

(原文:Actually, I'm a member of the Japanese boy band Hey!Say!JUMP, and we just have two accounts, Instagram and YouTube. I'm just watching it and sometimes, those kind of social medias are really helpful to know what the audiences think, so I try to use to know of them.)

*6 裕翔くんはROM専だというお話しだと思います(?)

 

記者E:(自己紹介の後に)今回このベルリン映画祭という大きな舞台に作品を持ってこられたと思うのですが、元々こちらの作品というのは企画段階ですとか製作段階では、どれくらい海外の観客-海外市場というものを意識されて作っていったのでしょうか。

監督:そこまで意識......どうなんですかね。プロデューサーは意識してたと思いますけど僕はそんなに意識はしていないですね。まさかベルリンに来られるとは、っていう感じです。

 

記者A:【この質問からゴリゴリのネタバレなので割愛します】

監督:【解説】

中島:結末についてお話しされてる(笑)私たちは何もネタバレしたくないので......すごい(笑)

(原文:He's talking about the ending (laughing), we don't want to spoil anything, you know. Oh my gosh, he's kind of tough (laughing))

司会:まあ記者会見にいる人たちは既に観てますし、このビデオの視聴者も、一度映画を観てから、よりこの映画を知るために観てると考えれば……

中島:(英語で)そうですね(笑)オッケーです......(笑)

 

司会:でもあなたたち次第です(笑)。既に映画作りと演技の双方の面で、この映画がどれほど難しいものだったかはお話ししましたが、特に記憶に残っている瞬間などはありますか?

中島:(日本語で)泡じゃないですか?(英語で)川村が泡に囲まれるシーンです。

(原文:The scene when Kawamura was surrounded by bubbles.)

司会:それは技術的に難しかったということですか。それともそこに時間をたくさん費やしたということでしょうか。

中島:(英語で)両方ですね。

(原文:Both, both. )

監督:泡に襲われるというのは映画でやった人はいないと思うので、何が正解かわからずに、いろいろ(○○)結局現場で直接やるしかなくて、だから彼にも泡に何度も沈んでもらって(○○して)、それで撮りきったかなと思ったらもう一度入ってもらうみたいな、そういう(○○でした)。

中島:(日本語で)その挑戦したことのないことに挑戦できることはすごく楽しかったですし、もちろん。本当に泡吸い込んじゃって咳き込んじゃったりして、すごい大変な瞬間とかはあったんですけど、でもその難しさ、難しいことにチャレンジしているということが、すごく楽しかったですし、(○○)誇らしいというか、(○○でした)。

司会:泡には何が入っていたのですか?

監督:あれはカプチーノコーストって言うんですかね、こっちだと。波の花っていう、カプチーノコーストですかね。有機物と化学反応で起こるという設定です。

 

司会:携帯電話を使ってその画面を見せるのに、どれくらい考えて、労力を注ぎましたか。

監督:そうですね。それはかなり時間をかけて、で、この映画中盤はもう彼が携帯をいじっているっていうのがしばらく続きますが、そこで映画がダレてしまうのは(○○だと)思ったので、そこでいかに面白く見せるかっていうのはかなり工夫して、いろんな思いつく限りのことをやりましたね。

 

記者D:すみません、2度目ですけれども。中島さんの英語が流暢なのにすごく驚いたのですけれども、海外作品とかに参加したいという(○○)があるのか、またその意味で言うと今回ベルリン出たということは、1つ大きな転機と考えていますか。

中島:(日本語で)そうですね、英語まだまだ全然なんですけれども、せっかくこういう機会をいただきまして、ベルリンに来られるなんてしかも国際映画祭で来られるなんて思ってもみなかったですから。もともとその英語をやり始めたきっかけっていうのが、そういう海外の仕事に憧れがあったからなので、ゆくゆくは海外の作品だったりとかっていうのにも、意欲的にチャレンジしたいと思いますね。

記者:(拍手)

中島:Haha. Thank you.

 

司会:歌手としてのキャリアを持つ日本でも、俳優としての仕事を好きなだけできることになっているのですか。*7

*7 "And even in Japan, does your career as a singer, and are you to work as much as you like an actor?"ストリーミング同様、イヤモニに別言語の通訳が突然入ってきたので戸惑われている様子でした(イヤモニを急いで外しています) 個人的にも、司会の方の質問に対する理解が不十分です

中島:(日本語で)そうですね。(英語で)今のところは、自分がやりたいことはできると思います。私の事務所はやらせてくれます。なので、それはとても素晴らしいことですし、自分にとって演じるということが無ければ私の人生はつまらないものになると思います。もちろんアイドルでいることも好きですが......でも演じることも好きです。さらに今回の川村は、特に感情を突き動かされたときに、暗い感情やむき出しの本能を露わにします。このような役を演じたことは無かったので、非常にやってみたかった役でした。この役を演じることができて、本当に嬉しいです。

(原文:So far, I think I can do what I want to do, and my agency let me do [it]. So, it's really a wonderful thing for me, and for me,  without acting, my life would be boring. Of course I like being an idol, but I really like acting. And acting gives me the feel like um... you can be a different person; totally different person. And also this time, Kawamura has dark emotion, or true nature especially when he is driven. I never played a role like this, so I really wanted to try it. I'm really happy to play in this roll.)

 

司会:(記者Aに対して)どうぞ、3度目の質問ですね(笑)

記者A:ありがとうございます。

中島:(日本語で)すごい質問してくださる(笑)

記者A:本当にありがとうございます。監督に質問したいことがあったので。男は穴が1メートル半だと言いますが、監督である貴方にとって、この狭い空間の中で撮影にあたって、大変だったことは何ですか。

監督:かなりチャレンジングな撮影でしたし、今まで撮ってきたタイプの映画だと芝居というか俳優の感情を引き出せば、それを撮ればいいと思ってたのですが、今回そういう訳ではなくて、全て計算して映像を撮っていかなきゃならなかったので、それは撮りながらチャレンジでしたが、(○○)手ごたえを感じました。

 

司会:助演を務める役者の方々は、どのようにキャスティングしたのですか。

監督:もちろんプロデューサーと相談しながら、候補の中から選んでいったという感じですかね。

 

記者A:(画面外で手を挙げる)

中島・監督:(笑)

司会:では最後の質問権はファンクラブのトップに(笑)*8

*8 "The head of the fan club can have the last one" めちゃめちゃ面白かったので原文も是非......トップオタク(TO)おじさま......

記者A:普段どのような歌を歌っていて、世界のどのような楽曲が好きなのか教えてください。

中島:(日本語で)難しい、何て言うんだろう......。(英語で)日本ではアイドルをしているので、普段はアイドル曲を歌っています。ですが......[指で強調しながら]いわゆる「アイドルらしい」曲だけではなくて、ジャズやロックといった、様々な分野の曲に挑戦していたいと考えています。普段はロックを聴くことが好きで、日本ではB’zRed Hot Chili Peppers、[海外だと]MR.BIGなど......好きなアーティストが数えきれないくらいたくさんいます。

(原文:As my career I'm a pop-idol in Japan, so we usually perform those kind of songs from idol. But ummmm.... not only "idol" songs, we want to try tons of varieties of songs like not only pop but also jazz, rock, those kinds of things. But usually really like listening to rock, like in Japan, B'z, Red Hot Chili Peppers, and MR.BIG... I can't count because I have tons of favorite artists.)

 

司会:ここで一旦お別れとなりますが、ご参加いただきありがとうございました。ベルリナーレ・スペシャルでの今夜の上映をお楽しみください。ありがとうございました。

(中島:俺でよかったのかな、最後......(笑)